Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
たぶん私は自分の意思で彼のそばにいることを選んだ。だからきっと時間ギリギリまで宗吾と一緒にいたい、終わってほしくないと思っているんだ。
「どうしても信じてもらえないなら、今日は六花を連れて行くところがある」
「今度は何よ……一体どこ?」
「それはまだ言えない」
「行きたくないって言ったら?」
「……一緒に来てくれたら、これを最後にしていい」
「どういうこと?」
そばにいたいと思ったのに、まるで突き放されたような気持ちになって悲しくなる。
「もう六花を縛りつけない。一週間まで時間はあるけど、婚姻届を返すよ」
「……それでいいの?」
「これ以上引き止めても、六花を苦しめるだけだってわかるから……でももし俺を信じる気になったらーーいや、今はいい。とりあえず準備だけしよう。シャワー浴びる? 一緒に入ろうか?」
「……こんな時にそんな冗談言わないでよ」
「冗談なんかじゃないよ。こんな時だから……ケンカをしたわけじゃないけど、仲直りしよう」
「……気持ちはわかるけど、今はいい。それに……
宗吾と一緒だとゆっくり入れなくなりそうだから」
「あはは。それもそうだな」
流されてしまえば、確かに何もなかったように振る舞えるかもしれない。でも今はそういう気分にはなれなかった。
「そこにあるガウン取って」
布団で体を隠しながら、ベッドの端に置かれていたガウンを指差す。宗吾はガウンを手渡しながらクスッと笑う。
「そのままでいいのに」
「嫌よ、こんなに明るいのに恥ずかしい……」
布団の中でガウンに袖を通してからベッドを降り、浴室に向かって歩き出した。浴室の扉を閉めた瞬間、その場にへたへたと座り込んでしまう。
とりあえずシャワーを浴びるが、昨夜ここで愛し合ったことを思い出して体が熱くなった。彼は私の中の忘れかけていた感覚をいとも簡単に呼び覚ますの……。
私が彼に愛されていただなんて、あれが彼の本音ならこれほど嬉しいものはない。だけど反対に裏切られたような感情を拭えないのも事実だ。
六花は浴室に置いてあったバスローブを着ると、髪を乾かしてから外へ出る。一人の時間を持てたことで、気持ちは少し落ち着いたように感じた。
するとスーツの上下へ着替えを済ませ、髪をきっちり整えた宗吾が、ソファに座って電話をしているのが見えた。
私服の時とは違って、普段の六花ならきっと近寄るのも気が引けてしまうくらいの、どこかピンと張り詰めた空気を纏っていた。
もし初対面だったら逃げてしまうかもしれないーーそれなのにこんなにドキドキする。彼の熱い吐息や、私の中で果てる時の表情、甘い囁きを知っているから……。
私はどうしたいの? 彼が信じられないわけじゃない。むしろ宗吾のことを信じてる。だってこんなに好きでたまらない。愛してると言われて嬉しいのに、それを素直に受け取れない何かが胸に引っかかっていた。
「どうしても信じてもらえないなら、今日は六花を連れて行くところがある」
「今度は何よ……一体どこ?」
「それはまだ言えない」
「行きたくないって言ったら?」
「……一緒に来てくれたら、これを最後にしていい」
「どういうこと?」
そばにいたいと思ったのに、まるで突き放されたような気持ちになって悲しくなる。
「もう六花を縛りつけない。一週間まで時間はあるけど、婚姻届を返すよ」
「……それでいいの?」
「これ以上引き止めても、六花を苦しめるだけだってわかるから……でももし俺を信じる気になったらーーいや、今はいい。とりあえず準備だけしよう。シャワー浴びる? 一緒に入ろうか?」
「……こんな時にそんな冗談言わないでよ」
「冗談なんかじゃないよ。こんな時だから……ケンカをしたわけじゃないけど、仲直りしよう」
「……気持ちはわかるけど、今はいい。それに……
宗吾と一緒だとゆっくり入れなくなりそうだから」
「あはは。それもそうだな」
流されてしまえば、確かに何もなかったように振る舞えるかもしれない。でも今はそういう気分にはなれなかった。
「そこにあるガウン取って」
布団で体を隠しながら、ベッドの端に置かれていたガウンを指差す。宗吾はガウンを手渡しながらクスッと笑う。
「そのままでいいのに」
「嫌よ、こんなに明るいのに恥ずかしい……」
布団の中でガウンに袖を通してからベッドを降り、浴室に向かって歩き出した。浴室の扉を閉めた瞬間、その場にへたへたと座り込んでしまう。
とりあえずシャワーを浴びるが、昨夜ここで愛し合ったことを思い出して体が熱くなった。彼は私の中の忘れかけていた感覚をいとも簡単に呼び覚ますの……。
私が彼に愛されていただなんて、あれが彼の本音ならこれほど嬉しいものはない。だけど反対に裏切られたような感情を拭えないのも事実だ。
六花は浴室に置いてあったバスローブを着ると、髪を乾かしてから外へ出る。一人の時間を持てたことで、気持ちは少し落ち着いたように感じた。
するとスーツの上下へ着替えを済ませ、髪をきっちり整えた宗吾が、ソファに座って電話をしているのが見えた。
私服の時とは違って、普段の六花ならきっと近寄るのも気が引けてしまうくらいの、どこかピンと張り詰めた空気を纏っていた。
もし初対面だったら逃げてしまうかもしれないーーそれなのにこんなにドキドキする。彼の熱い吐息や、私の中で果てる時の表情、甘い囁きを知っているから……。
私はどうしたいの? 彼が信じられないわけじゃない。むしろ宗吾のことを信じてる。だってこんなに好きでたまらない。愛してると言われて嬉しいのに、それを素直に受け取れない何かが胸に引っかかっていた。