夜を照らす月影のように#6
「本の中……」

僕が呟くと、皆は「え?」と僕を見る。

「ノワールは、この本に閉じ込められたんじゃない?ノワールは、誰かに行き先を伝えずに家を出る人じゃない。それを、リオンは良く知っているはず。だとすれば、そう考えた方が妥当じゃないか」

僕の言葉に、リオンは「……確かに、そうだね」と納得のいく顔を見せた。

「先生が本の中にいるんなら、どうやって先生を助ければいいの?」

エリカの言葉に、僕は視線を地面に落とす。

本の中に入ることが出来るのは、僕の知る限りではノワールだけだ。数日前に僕も本の世界に入ることが出来ることを知ったけど、それは僕の書いた詩が物語に登場する時限定。

僕が書いた詩が登場するのは、ノワールの書いた「小さな雪の天使」だけ。つまり、僕が本の世界に入ることが出来るのは、今のところは「小さな雪の天使」の1冊だけだ。

この本は、ノワールが太宰修也(だざいしゅうや)だった時から彼のことを知っている僕でさえも知らないもの。

だから、僕にもどうすることも出来ない。

「どうすんだよ!」

居候しているカズの声が、静かなリビングに響いた。

「失礼するぞ」

リビングに、リオンのお父さんと魔法警察のオズワルドさんが入ってくる。

「リオンたち、お父さんとお母さんは少し街に用事があるから出かけてくるね」

それだけ言って、リオンのお父さんはリビングを出ていった。
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