夜を照らす月影のように#6
「オズワルドさん……助けてください!」

リオンはオズワルドさんに近づくと、今起こっていることを話す。

リオンの話を聞くオズワルドさんは、いつもよりも冷たい目をしていて、僕はゾッとしてしまった。

話を聞き終えたオズワルドさんは興味無さそうにした後、服のポケットから杖を取り出す。そして、オズワルドさんは呪文を唱えた。

次の瞬間、僕の視界は光に包まれる。それが収まると、僕らはリビングではなく外にいた。

「ここ、どこ?」

周りを見渡しながら、リオンは呟く。

「見たことのない町並みだな」

普段、あまり感情を表に出さないカズも、珍しく戸惑った様子だ。

エリカもシャルロットも、戸惑っている。

……ここって……。

僕もゆっくりと辺りを見渡してから、思わず「懐かしいな」と呟いてしまった。

幸い僕の声は誰にも届かなかったみたいで、僕は安心する。

ここは、僕とノワールが前世で暮らしていた町。近くにあった立て札には、転生してから見なくなった日本語が並んでいる。

「あの文字、一体何でしょう?」

「分からない」

日本語で書かれた立て札を見つめて、皆は不思議そうな顔をした。

「……ねぇ、とりあえず散策しない?多分、ここは本の世界。この世界に、僕らの他にもう1人誰かがいる」
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