夜を照らす月影のように#6
僕がそう言うと、リオンは「メルが数を把握出来てるってことは、ここは本の世界で間違いなさそうだね」と言った。

それから、僕らは誰もいない町を歩き出す。

僕が前世のことを思い出しながら町を歩いていると、修也の実家の塀の上に座って空を見上げているノワールの姿を見つけた。

空を見上げるノワールの横顔は綺麗で、表情はどこか切なげで、それにドキドキしている自分がいる。

僕は、ずっとノワールに恋をしている。

それを隠しているけど、リオンには気づかれているんだろうな……。

「ノワール!」

リオンが声をかけるけど、ノワールは何も反応を示さない。

それに少し違和感を覚えた僕が「ねぇ、君!」と声をかけると、ノワールは「え?僕?」とゆっくりと僕らの方を見た。

「先生、探したんだよ!」

「……誰?僕の知り合い?」

塀に座ったまま、少し怯えたような、だけど他の人が見たら怯えてることに気づかないような、弱い笑顔でノワールは問いかけてくる。

本当は怖いけど、それを必死に笑って隠そうとしている。そんな感じがした。

……この笑顔、最近は……というか、転生してからは見なくなったけど……前世では、よく見たな。特に、学生の時に……もしかして、今のノワールは……ノワールとしての記憶がない……のか?
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