隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情

曲者がここにも

隼人と超豪華なマンションで一夜を明かした後、私はそのまま出社した。
更衣室のロッカーには着替えが数着置いてあるし、少し早めの時間に会社に着いたせいで誰にも会うことは無いはず。そう思っていたのだが・・・

「高井さん、おはようございます」
「おはよう、川村さん」

ロッカーを出てきたところで、珍しく早く出社したらしい川村唯に会ってしまった。
相変わらず綺麗にメイクして、肩を超える長さの髪もゴージャスに巻いている。
朝からこれだけの努力ができるエネルギーの半分でもいいから仕事に向けてもらえないだろうかと思うのは、私の無いものねだりだろうか。
でもきっと、世のお嬢様と呼ばれる人種は自分を犠牲にしてまで世間から見られる自分の外見に時間を割く。
朝の眠りたい30分よりも、大好きなスイーツを食べることよりも、自分の綺麗を保とうとするだろう。
もちろんそれはある程度の経済的な地盤があってのことだけれど、いつもどこかで誰かに見られる意識を失わないのは凄いことだと思うし、少なくとも私には無理だ。

「もしかして、すっぴんですか？」

一旦挨拶をしてすれ違ったものの、通り過ぎようとした私の背中に再び声がかかった。

「別に、そういうわけじゃ」
振り返って答えて見たが、確かに川村唯に比べれば私のメイクは手抜きに見えるのかもしれない。