隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情

その後はお兄ちゃんは不機嫌なままで社長室の空気も張り詰めていたが、私は黙々と仕事をこなしていった。

「桃さん、昨日は家に帰らなかったの？」

同じ部屋の中にいながら聞こえないふりをしてくれていた優也さんが、私に近づき小声で尋ねた。

「うん。あの後友達の家に行ったの」
「そうなんだ」
優也さんは何か言いたそうな表情。

もしかして遊んでいると思われたかしら。
別に、それならそれでかまわない。
最初から優也さんとの縁談に乗り気だったわけではないし、断ってもらえる口実になるのなら結果オーライだ。

「だからか、今日はシャンプーの匂いが違うね」
「えっ、ああ、友達に借りたから・・・」
「ふーん」

隠し事をしているせいか、優也さんの言葉に動揺した。
そんな私を優也さんがジッと見ている。