隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「そう言えば、」
「な、何?」
後ろめたい思いがあるから、つい身構えてしまう。

「谷口課長と同じ匂いだね」
「え、」

偶然、たまたま同じ匂いだね。そう言っただけなのかもしれない。
でも、私は優也さんの言葉に含みを感じた。
もしかして何か気づかれたのだろうか。
それは私の直感。

「課長も今日はいつもと違うから」
「そ、そんなこと、し、知らないわ」

こんなに動揺すれば認めたも同然とわかっていても、私には否定することしかできない。
どうしよう、優也さんに隼人との関係を知られてしまったら・・・

「ねえ桃さん、今度また二人で飲みに行こうよ」
「え?」
何をいきなりと、口を開けたまま固まった。

「最近、良いレストランを見つけたんだ」
「でも・・・」

普段から、私はあまり外出をしない。
元々友達も多くはないし、特に秘密を抱えている職場の仲間とは親しい付き合いをできないでいる。
もちろん優也さんは私の素性を知っているのだから他の同僚たちとは状況が違うけれど、やはり二人きりの外出には抵抗がある。
縁談のこともあり、あまり親し気な行動をとりたくないのが正直な気持ちだ。

「まさか、断らないよね?」

優也さんの言葉は、「断らないよね、断ったら何を言うかわからないよ」と言っているのだろうと感じた。だから、

「わかったわ。今は忙しくてすぐには無理だけれど、いつか行きましょう」
私はそう答えるしかなかった。

どうやらこの御曹司、かわいい顔をして実は曲者かもしれない。
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