隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「産直朝採れ野菜のサラダは人気があって、雑誌でも何度か取り上げられていたよね?」
「ええ、そう」

隣りのデスクに座る優也さんに声をかけられ、私もうなずいた。
朝採れにこだわった鮮度抜群の野菜はお客様にも好評で、このまま通年で提供しようという話になったところだった。
もちろん朝採れた野菜をその日の内に運んでくるのにはコストも手間もかかるけれど、農家と直接契約してやっと数を押さえたんだと聞いていた。

「品質の管理だって、ちゃんとやっていたはずなのに」
やはり、優也さんも悔しそう。

確かに、生ものだから衛生面での管理は徹底していたはずだ。
間違っても異物混入なんてありえないのに、ネットに上がった動画ではお皿の上で動く小さな虫が映っていた。

「その場で言わずにわざわざ後になって投稿するのは絶対におかしいよ。原因はきっと」
「優也さん」
思わず私が遮った。

思いは私も優也さんと同じ。
でもそれは、一条プリンスホテルに勤める者として口に出してはいけないこと。
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