隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「桃さん、サンドイッチとヨーグルトを買ってきたよ」
「ああ、ありがとう」

異物混入の報道以来ゆっくりお昼を食べる時間もなくなって、母さんが作ってくれたおにぎりやコンビニのサンドイッチですませることが増えた。
今日もコーヒーを買いに行くっていう優也さんに便乗して、お昼の買い出しを頼んでしまった。

「お腹が空いたときに摘まめるように、パンやお菓子も買ってきたよ」
「ありがとう、助かるわ」

外見だけでなく、女子のようなこまめな気遣いもできる優也さんは、こっちが言わなくても先に行動してくれるし、困ったなと思うとすぐに助けに入ってくれる。
最近では、研修に来ている優也さんに私の方がサポートしてもらっている気がするくらいだ。

「ネットの記事もほぼうちに好意的な意見ばかりで、投稿者の方に逆風が吹いているようだね」
「そうみたいね」

一条プリンスホテルと言えば国内有数の一流のホテル。
その評判や過去の実績から『異物混入はありえないだろう』というのが世間の見方。
どちらかというと、いまだに顔を出さない投稿者のやらせなのではとの声が多い。

「あれ以降新たな書き込みもないんだろ?」
「うん」

一条コンツェルンとしても外部の第三者を交えた機関に調査を依頼していて、その答えももうすぐ出るらしい。
そうなれば、はっきりしたこともわかってくるだろう。
それまでは何も言わずに待つしかない。

「桃さん、きっと大丈夫だよ」
「そうね」

トントン。
「失礼しまーす」

ちょうどそのタイミングで、社長室のドアが開いた。
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