隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「あれ、社長は不在ですか?」
社長室に入ってきて、私の顔を見るなり落胆の表情を見せたのは川村唯。そしてその後ろから、

「あれ、社長は不在だったのか」
隼人もやって来た。

「もしかして、社長と約束でしたか?」
コンビニの袋を手にしたままの優也さんが、隼人に聞いている。

「いや、さっき会長室を出たって聞いたから来たんだが、どこかで捕まったかな」

確かに今は会長であるおじいさまとの打ち合わせの時間。予定ではもうそろそろ終わってここに戻ってくるはずだけれど・・・

「電話してみましょうか?」

さすがに社外なら誰かが同行するけれど、ホテル内でおじいさまに会うのについて行く必要はないだろうと一緒に行かなかった。
おそらく途中で専務か副社長にでも捕まったのだろう。
携帯は持っているはずだから、かければ電話はつながると思う。

「また出直すからいいよ」
「そうですか」

又でいいって言うくらいだから、急ぎの案件ではないようだ。
お兄ちゃんが帰ってきたら知らせることにしよう。

「ところで、それは君たちのお昼ごはん?」
「え、ええ」

私と優也さんのデスクの上に置かれたサンドイッチとチョコと菓子パンを、隼人が不思議そうに見ている。
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