隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「こんな状況だから忙しいのはどうすることもでないが、健康管理も仕事のうちだ。あまり調子が悪いようなら休むなり病院へ行くなりしないと」
「はい、気を付けます」

優也さんにも川村さんにもわからないだろうけれど、隼人は怒っている。
側にいる時間が長いからこそ、私は言葉の中にある隼人の苛立ちを感じ取った。
それが体調管理のできていない私への怒りなのかははっきりしないが、これ以上怒らせないためには口答えしないほうが得策だろうと判断した。

「じゃあ課長、一旦戻りますか？」
「ああ、そうだな」
川村唯が隼人を促す。

「社長が戻られたらお知らせします」

ここ半月ほどは二人で会うこともできないほど忙しいから、こんな所で立ち話をしている時間でさえ惜しいはずだろう。
そう思って、私も隼人に声をかけた。

「じゃあ優也さん、高井さんのことお願いします」

はあ？

どさくさ紛れに優也さんを名前呼びした川村唯の発言に、声が出そうになった。
『一体何様のつもりだ』と叫びそうになったが、

「わかりました、お任せください」

優也さんの答えの方に衝撃を受け、私はその場に固まった。
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