隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
私隼人が初めて出会ったのは、入社から一ヶ月ほどたったある日。
新人研修中の私がホテルの制服を着てラウンジに立っていた時のことだった。
*****
「高井さん、何しているの?お客様がお待ちよ」
耳元で聞こえた威圧感漂う先輩の声。
それでも大学を出たばかりで社会経験もない私は、動けないまま立ち尽くした。
「早く、オーダーを聞いてきなさい」
言葉と同時にポンと背中を押され、私はつまずくようにして前へと進んだ。
「失礼します、ご注文をお伺いいたします」
教えられた通りに口にしてはみても、緊張で相手の言っている言葉が頭に入ってこない。
私は何度も聞き返しながら、「はい、はい」と言われた言葉をメモする。
それが精一杯だった。
そもそも大学を卒業するまでの私は、高井家をごくごく平凡な中流家庭だと思っていた。
家事はすべて母がしていて家政婦がいるような家でもなかったし、出かけるときも父が運転する車。月に一度家族そろってレストランで食事をしたり、年に一度ハワイやグアムへ家族旅行に行くことも当たり前のことと思っていた。
今思えば、高井家も裕福なお金持ちの家で私自身がそのことに気づいていないだけだったのだろう。
当然のように私は人に頭を下げた経験がなかったし、そのことに対しての抵抗もあった。
きっとその思いは先輩やお客様に対する態度に出ていたのだろうと思う。
新人研修中の私がホテルの制服を着てラウンジに立っていた時のことだった。
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「高井さん、何しているの?お客様がお待ちよ」
耳元で聞こえた威圧感漂う先輩の声。
それでも大学を出たばかりで社会経験もない私は、動けないまま立ち尽くした。
「早く、オーダーを聞いてきなさい」
言葉と同時にポンと背中を押され、私はつまずくようにして前へと進んだ。
「失礼します、ご注文をお伺いいたします」
教えられた通りに口にしてはみても、緊張で相手の言っている言葉が頭に入ってこない。
私は何度も聞き返しながら、「はい、はい」と言われた言葉をメモする。
それが精一杯だった。
そもそも大学を卒業するまでの私は、高井家をごくごく平凡な中流家庭だと思っていた。
家事はすべて母がしていて家政婦がいるような家でもなかったし、出かけるときも父が運転する車。月に一度家族そろってレストランで食事をしたり、年に一度ハワイやグアムへ家族旅行に行くことも当たり前のことと思っていた。
今思えば、高井家も裕福なお金持ちの家で私自身がそのことに気づいていないだけだったのだろう。
当然のように私は人に頭を下げた経験がなかったし、そのことに対しての抵抗もあった。
きっとその思いは先輩やお客様に対する態度に出ていたのだろうと思う。