隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
この2ヶ月間で、川村唯は隼人の秘書的役割が定着してしまった。
2人は常に一緒にいるし、隼人に仕事で連絡をとろうとすれば必ず川村唯が出てくる。
もちろんそれは仕事上の関係でプライベートとは違うとわかっていても、常に隼人と行動を共にする川村唯の存在が私は面白くない。
特に異物混入騒動の処理の為に忙しい隼人と話す時間さえない私は、川村唯に対して嫉妬のような感情を覚えていた。

「桃さんどうしたの?顔が険しいよ」
「ああ、ごめんなさい」

優也さんに指摘され、眉間を緩める。
隼人と川村唯を見るたびに感情が顔に出てしまう私は、ついつい隼人から視線を逸らす癖がついてしまった。
おかしいなあ、数か月前までは隼人を探して必死で追っていたのに・・・

「桃さん、食事の約束忘れてないよね?」
「ええ、大丈夫よ」

今回の騒動で私と優也さんの縁談は保留状態になってはいるが、話が立ち消えになったわけではない。優也さんが一条プリンスホテルでの研修を終えたとなれば、近いうちに答えを求められることになるだろう。その前に一度話をしておこうと思い、今日の食事となった。
もちろん私としては断ってもらいたいと思っているが、そのことについても優也さんと話をするつもりでいる。

「仕事が終わり次第向かうから、店の地図を送っておいてもらえる?」
残業になるかのしれないと予想して、優也さんにお願いしたが、
「今日は車で来ているんだ。僕もあいさつ回りがあるから、駐車場で待っているよ」
優也さんは一緒に行くつもりらしい。

「わかったわ。7時には出られると思うから」
「わかった。また連絡するよ」
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