隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「桃さんは自分が不幸だと思っているだろ?」

少しの沈黙があった後、優也さんが尋ねた。

「え、まあ、そうね」

両親を事故で失い里子に出された境遇を聞いて不幸だと思わない人はいないだろうと、私はうなずく。

「そうかなあ、どんな形にしろ心から愛してくれるご両親がいて、生活に困ることのない経済的基盤があって、そんな桃さんは幸せな人だと僕は思うよ」
「いや、でも」

愛されて生まれ、慈しみながら育てられ、その愛を感じて子供も親を愛する。
そんな当たり前を一瞬のうちに失った私の人生は、幸せとは言えない。

「世の中には親がいなくて、お金にも不自由している人がたくさんいるよ。それに、たとえ実の両親がそろっていても、愛のない家庭もある」
「優也さん?」

何かを感じた私は、顔をあげて真っすぐに優也さんを見つめた。
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