隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「うちの両親はとても仲が悪くてね、僕が子供の頃から別居状態が続いているんだ。別居中の夫婦なんて珍しくもないかもしれないが、愛しているわけでもないのに離婚もせず表面上夫婦でい続ける両親を僕は見て育った」

それは、初めて聞く話。
もちろん、優也さんについて調べればすぐにわかったことかもしれないけれど、私はそこまでの行動を起こさなかった。
それはきっと、私の優也さんに対する興味が薄かったってことだろうと思う。

「いくら実の両親でも、僕の誕生日と公式な行事の時にだけ年に数回顔を合わせる家族なんていらないよ」

『そうね』と思ったが、私は言葉には出せなかった。
確かに、優也さんから見れば私は幸せなのかもしれない。そんな気がした。

「だからかな、僕に結婚願望はないし、家庭を持ちたいとも思わない」

はっきりと言いきった優也さんに、私は返す言葉を失う。
しかし、丸星デパートを率いていこうとすれば、対外的な付き合いだって少なくはない。
一人息子で跡取りの優也さんは、私以上に多くの縁談を持ちかけられるはずだ。
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