隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
私が秘書室に戻り川村唯が社長秘書に戻ったところで、私の仕事はそう減ってはくれない。
お兄ちゃんの仕事は日々増えているし、その対応全てを川村唯にこなせるとは思わない。
そうなれば私がサポートに入ることになるし、そこに秘書室での仕事も加われば仕事量は増えることになるのかもしれない。

「桃にとってもその方がいいはずだろ?」

よくなんかない。
この話を聞いていいと思うのは川村唯だけだ。
いつも隼人の隣りにべったりとくっついて、隼人にかかわる以外の仕事は一切しない人間を秘書室に置いておく隼人の考えも理解できない。

「とにかく嫌です。秘書室に返してください」

データの解析だって、書類の作成だって、秘書課の誰よりも速くて正確だと自負している。
少しきつくてかわいげがないと言われるけれど、対外的に失礼な態度をとることもない。
全てをトータルしても、私は秘書課で役に立てると思っている。
だからきっと、秘書室に戻してもらえると考えていた。
しかし、

「このまま社長室での勤務を続けてくれ」
隼人は折れてはくれなかった。
< 131 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop