隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
ゆっくりと起き上がりベッドを出て窓の外を見ると、家の前に停まった車が一台。
その車には見覚えがある。
そして、

「嘘」
『よかった、元気そうだな』

車の前に立ちこっちを見上げている男性は・・・

「何で隼人がここにいるの?」
『桃が心配だったからに決まっているだろ』
「だって、いつ目が覚めるかもわからないのに」
『だからこそ、少しでも側にいたかったんだ』
「そんな、仕事だって山積みで」
『それを言うな、今夜は徹夜だ』
「隼人・・・」

窓越しの私に向かって手を振っている隼人を見ながら、私は涙が込みあがってきた。
仕事第一の隼人が、いつ目覚めるかもわからない私をずっと待っていてくれた。
そのことがうれしかった。

『仕事はなんとかするから、今はゆっくりと休め。桃は頑張りすぎたんだ』
「そんなんことないよ」
隼人やお兄ちゃんに比べればたいしたことはしていない。

『桃、会いたいよ』
「私も会いたい」

それからしばらくの間、私達はお互いを見つめあっていた。
手をとることも抱きしめることもできないけれど、私は隼人の存在を感じるだけで幸せだった。
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