隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「本当にもういいのか？」

川村唯が消え周囲に誰もいなくなったのを確認して、隼人の口調が変わった。

「うん、もう大丈夫」
「そうか？まだ顔色が悪いようだが、病院へは行ったのか？」
「それは・・・」
「お前なあ」
黙ってしまった私に、隼人は大きなため息をついた。

「病院に行け」というのは、この週末再三にわたりお兄ちゃんから言われ続けた言葉。
それでも、今はゆっくりと休みたいからとわがままを言って、ホームドクターの往診しか受けなかった。
きっと隼人も、お兄ちゃんや父さんと同じようにこの後は小言を言うのかなと、私は予想した。
しかし、

「近いうちに食事に行こう。桃の好きな物なんでも食べさせてやるから」
「えっ」
思いの外優しい言葉がかかり私の方が驚いた。

自己管理が足らなくて倒れてしまった私のことを、隼人は怒っているのだと思っていた。
叱られるとまでいかなくても、文句の一つも言われると覚悟していたのに・・・

「ずっと、桃に会いたかった」
「隼人」

どうしたんだろう、最近の隼人は時々らしくないことを言う。
好きな人に「会いたかった」と言ってもらったのはもちろんうれしいけれど、いつもとは違う隼人に少し不安を感じた。
だからこそ、私はわがままを言ってみた。
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