隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「大丈夫か?」
「うん」

隼人のマンションで吐き気を覚えてからしばらく後、私は隼人の車に乗っていた。
吐き気自体が消えたわけではないが、胃の中が空になったことで少しはすっきりとして動けるようにもなった。

「一度病院へ行った方がいい」
「うん」

さっきトイレでもどしている時、私はふと思い出してしまった。
それは、自分の生理周期。
思えば前回の生理から2か月以上間が空いている。
普段から不順気味とはいえ、さすがにこれはおかしい。
そして、ここ最近のめまいと倦怠感と食欲不振。
全てを総合的に考えると、ある結論に行きついた。


「谷口君、すまなかったね」
「いえ、どうやら同僚と話し込んでいたようです」

我が家の玄関まで私を送り、父さんに頭を下げる隼人を私は黙って見ていた。
やはり私たちの関係は誰にも知られてはいけないものなのだと思うと、急に空しくもなった。

「じゃあ、高井さんおやすみ」
「ありがとうございました、おやすみなさい」

上司と部下の挨拶をして帰って行く隼人を、私はただ見送ることしかできなかった。
< 150 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop