隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
みんなが押し黙ったままの沈黙の時間は、とても長く感じられた。

「注文の聞き間違えはあってはいけないことだけれど、誰にでも起こりうるミスです。特に新人にはなかなか難しい仕事だとも思う。そんな時に間違いが起きないように指導担当が付いているわけだから、君ももう少し気遣ってやるべきだったね」
先輩を見つめながら、谷口主任は穏やかなに口を開いた。

「すみません」
先輩も今度は素直に謝っていた。

その言葉を聞いた谷口主任は小さくうなづき、今度は私の方を見た。

「しかし、お客様が怒鳴りだすほど怒った原因は高井さんの言動だ」
「え?」
この流れから私が怒られることは無いのかと思っていただけに、驚いた。

「たとえ相手に非があると思っても、まずはお詫びする。それは接客業の鉄則だよ」
「でも、」

そこまでお客様に媚びへつらう必要があるのだろうか?
いくら接客業でも、間違いははっきりと主張するべきだ。その思いが私の顔にも出ていたのだと思う。

「不満そうだね」

なんだか笑われたような気がして、私は一歩前へと進み出た。
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