隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「随分思いつめた顔をしているな」
「社長」

一条プリンスホテル重役フロアの一角にある休憩スペース。
会議と会議の間に腰を下ろしていた俺は、社長である創介に声をかけられた。

「誰もいないんだから、創介でいいよ」
「ああ」

大学時代からの友人一条創介に誘われここに就職してから、仕事中は常に上司として接してきた。
もちろん時には本音が出るときもあるが、仕事とプライベートの区別はつけてきたつもりだ。
しかし、この関係ももうすぐ終わる。

「桃が、お前が辞めるのかって聞いてきたぞ」
「えっ」

おかしいなあ、まだ創介と会長以外には話していないのに。

「おそらく川村君からでも聞いたんだろうな」
「ああ」

そう言えば、来月からのスケジュールは入れないで欲しいと頼んだ時に退職することを話したんだった。
俺のスケジュール管理をしている川村さんには話さないわけにはいかなかったんだが、そうか桃も知ってしまったのか。
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