隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「隼人、無理していないか?」
肉じゃがをあてに日本酒を飲みながら、じいさんが俺を見ている。

「いいえ、大丈夫です。これは僕自身が望んだことですから」

母さんが実家に帰ることが決まり、次に話題になったのが俺のこと。
母さん以外に子供のいなかったじいさん夫婦には、後継者がいなくて困っていたらしい。
そんな時血のつながった孫がいるとわかり、じいさんの跡を継いでほしいと声がかかった。
さすがに国会議員なんて簡単になれる職業でもないと固辞してはいたが、周囲の熱意とじいさんの願いをかなえたい思いもあって後継者になることに決めた。
とは言えすぐに選挙に出られるものではなく、数年間は秘書としてじいさんの側で勉強することになるだろう。

「今の仕事も辞めるんだろう?」
「ええ」
どちらも片手間でできる仕事ではない。

「すまないな」

俺に向かって頭を下げるじいさんに胸が痛くなる。
今回の決断は、決してじいさんのためだけではない。
俺にだってそれなりの打算がある訳で・・・

「やめてください。何度も言いますが、僕が望んで決めたことです。ただ、例の件だけはくれぐれもお願いします。僕の望みはそれだけですから」
「ああ、わかっておるよ」
じいさんは何か言いたそうに俺を見ながら笑った。
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