隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
逃げ出す準備
どんなに願っても時間が止まってくれることは無い。
『どうしよう』『困ったぞ』とうろたえているうちにお見合いの日は近づいて行った。

「ねえ桃、当日は着付けの予約をしてあるから髪も結うのよ」
「はいはい」

なぜか楽しそうな母さんに返事はしたものの、私の気持ちは沈んだまま。
悪阻に体が慣れたせいか少しずつ食べられるようになった私は、できるだけ食べてよく寝て体力の回復に努めた。
これも全ては赤ちゃんと生きていくため。
私は3日後に迫ったお見合いの日までに、この家を出て行くつもりでいる。
実は、九州の田舎町に家具家電付きのマンションを契約してあり、すぐにでも住める状態になっている。
クリニックの先生に紹介状を書いてもらうことはできていないが、母子手帳をもらったから妊娠の経過はわかるはずだし、向こうに行ってから出産できるクリニックを探そうと思う。
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