隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「さあ、どっちがいいかしら?」
私の前に2枚の着物を並べて見せる母さんのうれしそうな顔。
「うーん、そうねえ」
一枚は私の成人式に高井の両親が用意してくれたもの。
もう一枚は、一条の母が祖母から受け継いだ品。
どちらも数回ずつしか着たことがないけれど、思い入れのある大切な着物だ。
「今回はこちらがいいわね」
そう言って母さんが手にしたのは一条家の着物。
黒字に赤と金が印象的に配置された総柄の振袖は、品がよくてそれでいて豪華絢爛な印象を与える。
「ねえお母さん、私」
お見合いをしたくない。と言いそうになった。
出来ることならこの家で子供を育てたい。
結婚は無理でも、父さんや母さんと共に暮らしたい。
でもそれはかなわないこと。私は両親の期待を裏切って、シングルマザーの道を選ぶのだから。
楽しそうに着物の用意をしてくれる母を見ながら、私は心が痛くなる。
「心配しなくても大丈夫よ。桃は幸せになるんだから」
不安そうな表情になってしまった私の肩を母がそっと抱きしめる。
「ええ、そうよね」
私はこの子と生きていく。
そしていつか、父さんと母さんに恩返しするんだ。
私の前に2枚の着物を並べて見せる母さんのうれしそうな顔。
「うーん、そうねえ」
一枚は私の成人式に高井の両親が用意してくれたもの。
もう一枚は、一条の母が祖母から受け継いだ品。
どちらも数回ずつしか着たことがないけれど、思い入れのある大切な着物だ。
「今回はこちらがいいわね」
そう言って母さんが手にしたのは一条家の着物。
黒字に赤と金が印象的に配置された総柄の振袖は、品がよくてそれでいて豪華絢爛な印象を与える。
「ねえお母さん、私」
お見合いをしたくない。と言いそうになった。
出来ることならこの家で子供を育てたい。
結婚は無理でも、父さんや母さんと共に暮らしたい。
でもそれはかなわないこと。私は両親の期待を裏切って、シングルマザーの道を選ぶのだから。
楽しそうに着物の用意をしてくれる母を見ながら、私は心が痛くなる。
「心配しなくても大丈夫よ。桃は幸せになるんだから」
不安そうな表情になってしまった私の肩を母がそっと抱きしめる。
「ええ、そうよね」
私はこの子と生きていく。
そしていつか、父さんと母さんに恩返しするんだ。