隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
お見合いの席に登場した人物
日曜の朝。
お見合い当日の朝は、早くからホテルに行き着付けをしてもらう予定になっていた。
先方との約束が11時だからと、私は母と9時前に家を出た。

「桃、顔色が悪いけれど、大丈夫なの?」
「うん、昨日寝られなかったからだと思うわ」
母さんに心配そうに言われ、私は正直に答えた。

一昨日も、昨日も、何度も何度も家を出ようとした。
当面必要な荷物はすでに送ってあって身一つで行けばいいとわかっているのに、母さんや父さんの顔を見ると決心が鈍り行動に移せなかった。だからだろうか、昨夜は一睡もできなかった。

「もし辛いなら、着物はやめて洋服でもいいのよ」
「うん、そうね」

こんな時のためにこの秋新調したワンピースを着てきた。
振袖とまではいかないけれどフォーマル感もあり、父さんも納得はしてくれるはずだ。
でも、その前に私はここを逃げ出そうとしている。
振袖とワンピースのどちらがいいのかなんて話ではないのだが・・・
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