隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「高井さんがどんな動機でうちのホテルに入社してきたかを今更詮索するつもりは無い。望んで入って来たにしても、渋々だったにしても、ここにいる以上一条プリンスホテルのスタッフとしての自覚を持ってもらわなくては困る。それができないのなら、自分の身の振り方を考えた方がいい」
「谷口主任そこまで言わなくても・・・高井さんは、その・・・」
慌てて言葉を遮った課長の動揺した様子。

この瞬間、課長は私の素性を知っているのだと理解した。
そしておそらく、谷口主任もわかっているはず。

「将来どんな仕事をするにしたって、自分の意に反して頭を下げることは起きる。それがうまく対処できないようでは、どんな仕事も続かないよ」
「・・・」

私は悔しくて、ギュッと唇をかみしめた。

周りの人よりも恵まれて育ったのは事実だ。
お金も苦労も、生活の心配もしたことは無い。
一条の娘であることを嫌いながら、心のどこかに一条家の娘だという奢りがあったのかもしれない。
だからこそ、新人研修にも真剣に挑めていなかった。
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