隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
体調を考えて着物を着ることを断念した私は、ヘアメイクだけお願いして用意された控室へと入った。
同行していた母さんは仲人さんへのご挨拶や父さんとの連絡にバタバタとしていて、私のことを気にする暇もない。
ということは、逃げ出すなら今がチャンス。
両親のもとを去りがたい気持ちからここまで来てしまったけれど、これ以上引き延ばせば益々大変なことになる。

私は一人になったタイミングで、控室を抜け出した。

「この先が正面玄関だけれど・・・」

ここは一条家にも縁の老舗ホテル。
子供の頃からお祝いごとの度に来ていた場所だから、おおよその位置関係はわかる。
このまま正面玄関に向かえばすぐに外へと出られるけれど、ロビーには人も多くて目立ってしまうかもしれない。
私は正面玄関ではなく庭園へとつながる出入口へと進むことにした。
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