隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
知らないところで事が進み、一見騙されていたような状況になった父さんとしては複雑な思いのようだったが、隼人がきちんと説明してくれたことでなんとか納得してくれた。

「桃さんの好きな人というのは、こいつで間違いないのかな?」
確認するように近藤代議士に尋ねられ、
「はい」
私も素直に答えた。

「こんな形での見合いに、高井さんが不信感をお持ちなのは理解できます。本当に申し訳ないとも思いますが、わしは桃さんに感謝をしておるのです」
「それは、どういうことでしょうか?」
近藤代議士の言葉に反応して、それまで黙っていた母さんが口を開いた。

「お恥ずかしい話ですが、わしと娘は30年近く絶縁状態でしてね、隼人とも会ったことすらありませんでした。今思えば、小さな意地の張り合いで引っ込みがつかなくなり、大切な家族を失っていたわけです。今年になって娘との仲も回復し、孫とも会えるようになったわけですが、隼人にしてみれば今まで会ったこともない年寄りの跡を継げなんて虫のいい話だと思ったことでしょう。それでも跡を継ぐと言ってくれました。それは桃さんのお陰でもあります。だからわしは桃さんには感謝しておるのです」
「そんな、私は何も・・・」

隼人がどんな思いで近藤代議士の跡を継ぐ決心をしたのかはわからないが、隼人自身が考えて決めたこと。
いい加減な気持ちで将来の選択をするような人でないのは私自身もよく知っている。

「じゃあ桃さん、この縁談を受けてもらえるかな?」
「はい」
「それは良かった」
近藤代議士のホッとした顔。

「でも、・・・」
そうだ、私にはまだ隼人に伝えないといけないことがあった。
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