隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「相変わらず体重は減り気味ね。もう少し食べたほうがいいわ」
「はい」
悪阻のせいもあって落ちた体重はまだ戻らなくて、これで水分もとれなくなったら入院だと言われていた。

「貧血も進んでいるみたいね。お薬は飲んでいるの?」
「ええ。でも、貧血の薬は胃がムカムカして嫌なんですよねえ・・・」

前回の診察でも貧血の指摘はされていて、薬も処方されていた。
もちろん頑張って飲むようにはしていたが、悪阻の症状と重なると吐き気が強くなって飲めない日も多かった。

「じゃあレバーとかほうれん草とかを食事でとるのはどう?」
「あ、それ苦手です」

そんなに好き嫌いが多い方ではないけれど、レバーもほうれん草も得意ではない。
出来ることなら避けたい食材だ。

「じゃあ仕方がないから薬を出すわ。胃薬も一緒に処方しますからね」
「はぁい」

普段から健康体の私は、自分が病気になるなんて想像もしない。
だからこそ、過信が生まれる。
頭では理解できているけれど、体が妊娠に慣れてきたこともあって私は油断していた。
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