隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「あら?」
触診をしながら全身のチェックしていた先生の手が、おなかの上で止まった。

「何か?」
先生の表情が曇ったのがわかって、私も声が出た。

「おなかがずいぶん張っているわね」
「そう、ですか?」

最近お腹が出てきたばかりで、気にしたことは無かった。
何しろ初めての妊娠だから、何がおかしいのか何が普通のことなのかがわからないのだ。

「急に動いたり、長時間立っていた時にお腹が硬くなったりしなかった?」
「ああ、あります。でも、少しじっとしていると治まるんです」
「それがお腹の張よ」
「そうなんですかあ」

私だって妊娠については自分なりに勉強した。
太りすぎるのも、塩分のとりすぎもダメ。
とにかくよく体を動かすのがいいと書いてあったから、できるだけ歩くようにしている。
もちろんお腹の張りが流産への危険信号なのも知ってはいたけれど、張りがどんなものかがわかっていなかった。

「お腹が張って、桃や子供に悪い影響があるのでしょうか?」
それまで黙っていた隼人が身を乗り出してきた。
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