隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「盛大なパーティーだな」
「ええ」

子供達が楽しそうに庭で遊ぶ姿を見ながら、俺は桃と共にいた。

数年前まで、ここに住むのは会長一人だった。
気心の知れた使用人に囲まれ何不自由ない暮らしはしながらも、きっと寂しいものだったに違いない。
それがわかっているから、望愛さんは会長との同居を申し出た。

「楽しそうだな」
「そうね」

生まれた家とは言いながら、ここに暮らしたことのない桃には複雑な思いもあるだろう。
それでも、ここが桃の原点。
俺自身が親になったからこそ、今ここに桃が存在する奇跡をありがたいと思うし、今日に至るまで影日向から支えてくださった人たちに感謝の気持ちでいっぱいだ。

「来年は5人で来たいわね」
「ああ」

本来の予定ではあと数年はじいさんの側で勉強するはずだったが、じいさんの希望で次の選挙には俺が出ることになりそうで、そのための準備も進んでいる。

「選挙と重なったら来れないわね」
ボソッと漏れた桃の言葉。

来年の春には統一選挙があり、間違いなく俺も選挙に出る。
ちょうどその時期に開かれるパーティーに参加するのはかなり至難の業だと思うが、俺はあきらめない。

「大丈夫、俺にとっての一番は家族だ。桃と子供達とまたここに来ような」

創介が忙しい時間を縫うようにして開くパーティーに、俺だって来年も参加する。
それは俺の決意だった。

「ありがとう、隼人」
桃が瞳を潤ませる。

「どういたしまして」

俺はそっと桃の手に自分の手を重ね握りしめた。
この温もりは俺のも。どんなことがあっても手放したりはしない。
拙い足取りで走る娘の咲良を目で追いながら、俺は今世界中の誰よりも幸せだと感じていた。
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