隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「じゃあ、これが出来上がった報告書。過去の資料は共有ファイルに入れてあるから、これからは自分でやってちょうだいね」
無駄とわかりながらも、念を押す。
「はーい、ありがとうございます」
絶対にありがたいなんて思っていなくせに、ニコニコと私を見る川村唯。
本当なら文句の一つも言いたいところだけれど、今更無駄だろうと諦めた。
それよりも、私は早く社長室を出たかった。
「あれ、高井桃いたのか?」
ちょうど私が出て行こうとしたところに入ってきたお兄ちゃんの意外そうな顔。
あーあ、会ってしまった。
出来れば顔を合わせたくない人なのに。
「ご心配なく、すぐに出て行きますから」
勤めている会社のトップに向かってあんまりな言い方なのはわかっている。
私だって川村唯のことがなかったらこんな言葉を投げかけることはしなかっただろう。
それでも、どうしても我慢できなくて、私は強い言葉を口にした。
「相変わらず口が悪いな」
それに対してお兄ちゃんも嫌味なことを言った。
本当ならこの時点で、お兄ちゃんも虫の居所が悪いのだと気が付くべきだった。
社長に就任して日も浅く、同時に一条コンツェルンの総帥としての仕事も加わって一杯一杯になっているはず。
少し考えれば想定できる状況だったのに、私にはそこまでの思慮ができなかった。
「口が悪いのは家系ですので、仕方ありません」
「ちょ、ちょっと高井さん」
お兄ちゃんと私の関係を知るはずもない川村唯が慌てたように私に声をかけた。
無駄とわかりながらも、念を押す。
「はーい、ありがとうございます」
絶対にありがたいなんて思っていなくせに、ニコニコと私を見る川村唯。
本当なら文句の一つも言いたいところだけれど、今更無駄だろうと諦めた。
それよりも、私は早く社長室を出たかった。
「あれ、高井桃いたのか?」
ちょうど私が出て行こうとしたところに入ってきたお兄ちゃんの意外そうな顔。
あーあ、会ってしまった。
出来れば顔を合わせたくない人なのに。
「ご心配なく、すぐに出て行きますから」
勤めている会社のトップに向かってあんまりな言い方なのはわかっている。
私だって川村唯のことがなかったらこんな言葉を投げかけることはしなかっただろう。
それでも、どうしても我慢できなくて、私は強い言葉を口にした。
「相変わらず口が悪いな」
それに対してお兄ちゃんも嫌味なことを言った。
本当ならこの時点で、お兄ちゃんも虫の居所が悪いのだと気が付くべきだった。
社長に就任して日も浅く、同時に一条コンツェルンの総帥としての仕事も加わって一杯一杯になっているはず。
少し考えれば想定できる状況だったのに、私にはそこまでの思慮ができなかった。
「口が悪いのは家系ですので、仕方ありません」
「ちょ、ちょっと高井さん」
お兄ちゃんと私の関係を知るはずもない川村唯が慌てたように私に声をかけた。