隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
私が秘書課を出れば、隼人と会う時間は無くなってしまう。
もちろん、隼人との関係はいつか終わってしまう一時的なものだ。
複雑な家庭の事情を抱えている私は、隼人との結婚を考えているわけではない。
それでも、今の関係が少しでも長く続いてほしいと思っていた。
隼人も同じ気持ちでいてくれると信じていたのに・・・
色々と考えていたら悔しくて私は唇をかみしめた。

「それと川村さん。前任者から業務を引きついで一年が過ぎたことだし、今の君の業務量を把握したいから、今自分でやっている仕事を簡単にまとめて提出してくれるか?」
「えっ」

私が叱られて終わるのだろうと思っていた川村唯がポカンと口を開けた。
そりゃあね、事務作業をすべて私に丸投げしている以上今やっている仕事なんて朝のお茶出しと電話番くらいものだもの。焦るわよね。
フフフ、いい気味。

「高井さんは今日のことを報告書にして明日中に提出してくれ」
「あ・・・はい」

やっぱり仕事になると隼人は鬼だと、去っていく背中を睨んでしまった。
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