隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
週末の日曜日、私は両親と共に一条家にお邪魔した。

「いらっしゃい、桃ちゃん」
「こんにちは、望愛さん」

すべに妊娠6カ月を迎えお腹も出てきた望愛さんが玄関まで出迎えてくれた。

「高井さんもお忙しいところわざわざすみません」
一緒にやってきた両親に頭を下げる望愛さんは、もうすっかり一条家の奥様だ。

「どうぞ、お上げり下さい」

珍しい、今日はお兄ちゃんまで家にいるようで玄関まで出てきた。

ここのところ年に数回、お正月やお盆、おじいさまの誕生日に訪れる一条邸。
普段はおじいさまが住み込みの使用人と共に暮らしていて、大きなお家はいつもきれいに磨き上げられている。
私がこの家に初めてやって来たのは高校に入学してすぐの頃だった。
当時高井家の養女だったことを知ったばかりの私は両親に騙されていたような気がして、ことあるごとに両親とぶつかり喧嘩をてしいた。
夜遅くまで遊び歩いたこともあるし、随分荒れた生活をしていた記憶がある。
そんなある日、下校時間に校門を出ると黒塗りの高そうな車が止まっていた。
車から降りてきて私の前に立った男性が一条のおじいさまで、おじいさまに誘われた私は一条邸を訪れたのだった。
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