隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「旦那さま、お客様が見えられました」
「そうか、お通ししてくれ」

執事に声をかけられおじいさまが答えるとすぐに、廊下を近づいてくる足音。
しばらくして、

「失礼します」
入って来たのは爽やかなイケメンだった。

「優也、久しぶりだね」
「創介さん、ご無沙汰しています。来週からお世話になります」

礼儀正しく頭を下げる姿は、いかにも好青年。
私と同じ25歳って聞いたけれど、ひょっとしたら年下かしらってくらいかわいらしい顔をしている。

「優也君、こっちが孫娘の桃だ」
「お孫さん、ですか・・・」

どうやら今日の対面は本当に偶然だったらしく、優也さんは私の存在を知らないようだ。
おじいさまとお兄ちゃんと私の間に視線を泳がせ、一体どういうことなんだろうと不思議そうな顔をしている。

「高井桃です」
一応紹介されたからにはあいさつが必要だろうかと立ち上がった私に、
「高井、桃さん?」
益々訳が分からないって表情の優也さんが面白い。

決して意地悪をするつもりではないが、意図的に仕組まれた出会いでなかったことがうれしくて私は微笑んでいた。
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