隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
今うちの企画室のメンバーは20人ほど。
もちろんその中には若手もいるけれど、部長も課長も昔からいるメンバー。
企画室自体が専門的な知識やスキルを求められるため、人事異動はあまり多くない。
その分マンネリ化しやすい部署でもある。

「企画室のトップにやる気があるなら説明して新しい案を出させることもできるだろうが、今のうちの企画室にそれは望めはない。残念だが強引な手に出るしかないんだよ」
言いながら、お兄ちゃんが自虐的に笑った。

「それって、企業にとっては良くないことですよね？」

言葉にはしなかったけれど、優也さんはなぜそのまま放置するのかとお兄ちゃんに聞きたいのだろう。
私も同じ気持ちだった。

「うちのホテルだけで何人の人間が働いていると思う？そのすべてを思うように動かすのは簡単じゃない。それに俺たちが相手にするのは機械ではなくて人間だ。一人一人が違った個性を持っているんだから、排除するのではなくその能力を生かすのが俺たちの仕事だ」

グループ全体で何万人もの人を束ねようとするお兄ちゃんの言葉は重い。
そして、それはきっと優也さんの未来を見据えて出た言葉なのだろうと、私は感じていた。

「すみません、僕が短慮でした」
目先のことだけを考えて口にしてしまったことを、優也さんは反省しているようだ。

そう言えば、企画室の若いメンバーの中には優秀な人も多いって聞く。
そういう人たちが育ってくれれば、企画室も変わるはず。

「そういうわけだから、『これでは話にならない。今月中に新しいものを提出しろ』と俺が言っていたと突き返してくれ」
「承知しました」
私は頭を下げて企画書を受け取った。
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