隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
企画部長には申し訳ないが企画書はお返しし、その後は電話番をしながら秘書業務を続けた。
どちらかと言うと優也さんはお兄ちゃんと話をしている時間が長く、私がここにいる意味があるのだろうか?別に川村唯でもよかったんじゃないか?と感じていた。

「ああそうだ、桃が作ってくれた先日の報告書にあと3年分古いデータを入れて推移を出したいんだ、今日中にできるか?」
「ええ、今はまだ抱えている仕事も少ないので大丈夫です」
「じゃあ頼む」
「はい。でも、あの報告書を私が作ったって気が付いていたんですか?」
てっきり川村唯の手柄になったのだと思っていたのに。

「当たり前だ。部下がどれだけの仕事をしているのかが把握できないようでは、社長は務まらない」

自信満々に言う姿が少し憎たらしい。
いつもの私なら、「へー、そうですか」なんてかわいくない言葉を言ってしまうところだろうけれど、今日は何とか飲み込んだ。
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