隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
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ドンッ。
机に乗せられた段ボールを見て、私は唇をかみしめた。

お得意様を招いてのパーティー用に作ったパンフレットに誤植があり、それに気づかずに印刷まで回してしまった私のミス。
印刷所に無理を言って再印刷をお願いし何とか期日に間に合ったけれど、秘書室にとっては大きな失態に違いない。
新人でもないのにこんなミスを犯すなんて、本当にどうかしている。
せめて誰かにチェックをお願いしていればこんなことにはならなかったのに、自分を過信して勝手にゴーを出してしまった私の責任だ。

「らしくないね」
投げかけられた言葉。

私は、自分の仕事にプライドを持っていた。
お兄ちゃんがそうであるように、どんな小さなことにも妥協せず間違いのない正確な仕事を心掛けてきたし、それなりの成果もあげてきたつもりだった。それなのに・・・
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