隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
課長が言うように更衣室には何種類もの着替えが用意してあったが、私は無難にTシャツとハーフパンツを選んだ。

「桃ちゃん、こっちだよ」

着替えが終わり廊下に出ると、すぐに声がかかった。
いつもは高井さんと呼ぶ課長の「桃ちゃん」呼びに動きが止まり、私はキョトンとする。

「さすがにここで高井さんはおかしいだろ?」
「ええ、まあ」
「俺のことは大好きなお兄ちゃんの友達くらいに思ってくれればいい。それなら桃ちゃんでおかしくないはずだ」

チクン。
わざわざ『大好きなお兄ちゃん』なんて言葉を口にするのが憎らしいけれど、今の私に言い返す元気もない。

「だから、俺のことも隼人でいい」
「隼人、さん」
「そう、それでいい。それと、職場じゃないんだから敬語もやめてくれ」
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