隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「桃さん」
「何?」

他愛もない会話をしながら食事も後半に差しかかり、もうすぐデザートってところで優也さんに名前を呼ばれた。

「一条家から桃さんとの縁談の話が来ている」

私はまだ何も聞いていないけれど、優也さんがうちのホテルに来た時点でそういう話になるのだろうと予想はしていた。
『やっぱりね』って言うのが、素直な感想だ。

「できれば優也さんの方で断ってもらえると」
「無理だよ」

え?

「丸星デパートは一条コンツェルンよりも立場が弱いんだ。だから、丸星の方から断るのは簡単ではない」
「そんな・・・」

本気でお見合いなんて勧められたら困ってしまう。
出来れば優也さんの方から断ってほしかったのに。

「桃さん、今恋人はいないんだよね」
「ええ」
いるなんて言えば大変な騒ぎになってしまう。

「じゃあ時々僕と食事にでも行かない?」
「いや、それは・・・」
「僕と会っているうちは見合いの話も来ないよ」
「それはそうだけれど・・・」

そんな事をすれば話が益々ややこしくなる気がする。
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