隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
25年前に起きた交通事故。
その時亡くなった両親の車に、私も乗っていた。
学校に行っていたお兄ちゃんはいなかったけれど、私はその場にいた。
飛び出してきた歩行者を避けようとしたトラックがセンターラインを越えたことによる多重事故。
たまたま反対車線を走っていた父の車はトラックとぶつかり、運転していた父と後部座席にいた母が亡くなった。
私は母に守られるように抱えられていたそうで、怪我一つなかった。
だから、私が今ここにいられるのは母のお陰なのだ。

「何で私だけ生き残ったのだろう」
無意識のうちに口から出た言葉。

普段はそんなことを思いもしないのに、ここに来ると考えてしまう。
現場も改修され事故の痕跡はないし、そもそも私は事故当時の記憶もない。
それでも、ここに来ると心がざわついてしまう。
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