隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
今年も亡くなった両親に手を合わせることができた。
自分の出生を知った今、こうして元気でいられることに感謝の気持ちしかない。

「桃、もういいか?」
「うん」

そっと腕を引き、隼人が歩き出す。

「今日は泊っていけるんだろ?」
「ええ」

普段から外出についてあまりやかましく言われることのない我が家は、事前に連絡さえすれば外泊だって許してくれる。
もちろん女友達の家に泊っていると思っているんだろうから、隼人の家にいると知れれば大騒ぎだろうけれど、基本的には寛容な両親だと思う。

「じゃあ行こう」

なぜか楽しそうな隼人に、いつもと違うなと感じながらも私は黙ってついて行った。
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