隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「ねえ、ここって・・・」

隼人の運転する車でついたのは大きなビルにある地下駐車場。
見るからに高そうな外車が何台も並んでいる場所。
外は暗くてあまり見えなかったけれど、ここは都心のビルにある地下駐車場だと思う。
入って来た時の感じからホテルではなさそうだし、一体隼人はどこに行くつもりなんだろう。

「ここは知り合いのマンションだ。元々投資目的で買ったもので、今はゲストハウスとして利用しているらしい。今日はたまたま借りたんだよ」
「へー、すごいわね」

二人の関係が秘密である以上お互いの交友関係も知らないし、そのことを詮索しようとも思わない。
ただ、時々だけど、隼人の行動に違和感を覚えるときがある。
それは本当に些細なことで、通っているスポーツクラブがセレブ向けの所だったり、普段ブランド品には興味がないくせにたまに高級そうなスーツや靴や鞄を持っていたり。
「自分で買ったんだ」とか、「知り合いのコネでね」なんて言っているけれど、何か秘密があるのではと私は思っている。

「桃、どうした?」

地下駐車場から建物に入りコンシェルジュの常駐するフロントを通過したあたりで歩みの遅くなった私を、隼人が振り返った。

「ねえ、ここは誰のマンションなの?」

こんなにすごいマンションを投資目的に購入するってただものではない。
もちろんお金持ちなのだと思うけれど、それだけではない気がする。
凄い有名人や著名人か、大物政治家、あるいは悪いことをしてお金を儲けている人。
どちらにしてもお友達になりたくない人種ではあるな。

「だから、知り合いだって」
足を止め、隼人は呆れたように動かなくなった私を見た。
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