隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「なかなかいいだろ」
「うん、とっても素敵」

いや、素敵なんて言葉ではたとえられないくらい、感動的な光景。
窓を背に立ち私を振り返る隼人までが輝いて見える。

「今日は桃にとって特別な日だから、ここに来ることにしたんだ。こうして街の明かりを眺めて、この小さな明かり一つ一つに違った人生があると思ったら、自分がちっぽけに思えてきて、悩んでいたことが馬鹿馬鹿しくなるだろ」
「そうね」

さすがに馬鹿馬鹿しくなるとまでは言わないけれど、この地球にいる何億人もの人間の1人である私の長い一生の中で過ごす一瞬の時間。そんな風に感じて少しずつ気持ちが軽くなっていく。

「お母さんもお父さんも、きっと空の上から桃を見守ってくださっているよ」

言いながら隼人が唇を重ねる。
私も隼人をギュッと抱きしめた。

私達の関係はきっとセフレなのだろう。
それでも私は隼人の隣りにいることで救われる。
触れ合っているだけで、幸せを感じる。
付き合ってもいないくせにかなり重症だなと思いながらも、出来ることならこの時間を失いたくないと願ってしまう。
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