隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
「桃はもう少し用心した方がいい。気を付けないと自分の意に反したところで縁談がまとまってしまうぞ」
「そんなこと言われたって・・・」
「優也との関係も、あんまり親しげにしていると誤解されるぞ」
「そんな・・・」

俺は田口優也って男を知っている。
大学の後輩で、頭もいいし性格だって良い奴だとも思う。
ただ、少し計算高いというか、上手に相手も懐に入っていくところはある。
もちろんビジネスをする上では必要な才能だと思うが、男女の交際に関しては少し様子が違ってくる。
学生時代の優也はあの童顔で優し気な顔立ちのせいで、年上からも同年代からもモテていた。
もちろん本人もそのことがわかっていて、上手に利用していたように思う。
いい意味でも悪い意味でも恋多き男だった。

「お前が優也に利用されるんじゃないかって、俺は心配なんだよ」
「優也さんはそんな人じゃないわ」
「それが甘いって言うんだ。優也が学生時代どんなに遊んでいたかをお前は知らないだろう」

表面上優しくて、耳聞こえの良いことばかり言う人間は信用できない。
そのことが桃にはわからないんだろうな。

「それを言うなら隼人だって、学生時代には随分モテていたらしいじゃないの」

プッ。
桃の言葉に驚いた俺は飲みかけの水を噴出しそうになった。
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