隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
ブブブ ブブブ
今度は俺のスマホに着信。

はあー。
かけてきた相手を確認して、俺は肩を落とした。

ブブブ ブブブ

それでも鳴り続ける電話には出るしかなくて、俺は通話ボタンを押した。

「もしもし」
『隼人さんですか?』
「ええ」

『先生がお目にかかりたいとおっしゃっていますが?』
「はあ」

いつがいいですかと相手は聞いている。
どうやらこの時点で、「会いたくない」って選択肢はないようだ。

『隼人さん?』
「はい、聞いています」

俺が黙り込んでしまったせいで、不審がられたらしい。
でもなあ・・・できれば会いたくない相手だ。

『そう言えば、マンションはいかがでしたか?』
「ええ、よかったですよ」
『よかったらそのまま使ってもらって構わないと先生がおっしゃっています』
「いや、それは・・・」

電話をしてきたのはこのマンションの持ち主の秘書。
普段頼み事なんてしない俺が珍しく『マンションを一晩借りたい』なんて言うものだから、この機を逃すかと接触してきたのだろう。
まあ、毎日くるメッセージを俺が無視し続けていたから、当然と言えば当然かもしれない。

『できれば時間のお約束をしたいのですが』
「わかりました。平日の夜か週末であればいつでも結構ですので、メールでお知らせください」
『承知しました。またご連絡いたします』

今回は俺の方が頼みごとをした手前、断ることができなかった。
どうせ近いうちに会う必要があるようだし、桃もこのマンションを喜んでいたし、仕方がないと思って今回は会うことにしよう。
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