琥珀色の砂時計
「ホントにちゃんと育てられるの~? ママは面倒看きれませんからね! こはくが飽きたら何処かに引き取ってもらうわよー」

 え? こはく!?

 その『ママ』さんとやらの台詞(セリフ)が投げられたのは……目の前でわたしに視線を合わせる少年だった。小学校に入ったくらいかな、誕生日プレゼントだなんて……わたしが六歳の誕生日にこはくをもらった時を思い出した。いえ……ちょっと待って! この子が『こはく』なら、一体『わたし』は……!?

「あきたりなんかしないよ! ねぇママ、早く小松菜とレタス出して! えっとー『めのちゃん』に食べさせるんだから!!」

「台風のお陰で葉野菜高いのよ~! 大体『めのちゃん』ってなぁに? この子の名前?」

「うん! 『めのう』の『めのちゃん』。ボクとおんなじ石の名前にしたんだー」

 こはく……!!

 わたしは起き上がって『こはく』に近付いた。でも、ああ……見える脚元、リクガメの前脚だ! その瞬間、こはくは人間、わたしはリクガメに生まれ変わったのだと気付かされた。

「わっ! めのちゃんがボクの所に来たよ! ほら~ママ早く! きっとお腹が空いてるんだ」

「んもぅ~このギリシャリクガメっていうの、どれだけ成長するの? あんまり大きくなったら、お店に返しちゃいますからね!」

 こはく目がけて突進したわたしは、いきなり何かに行く手を遮られた。これってきっとカメ部屋のガラス面だ。ガリガリと前脚でもがいてみせる。こはくは再び興奮したように瞳を輝かせて、ママを急かして扉の向こうへ消えた。


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