琥珀色の砂時計
「いいや……それは無理であろうな。この者を生き返らせては、綴られた過去が変わってしまう。が、その代わり今すぐにでも来世へ飛ばしてやろう」

「来世へ……そ、それではエンマ様! どうかこはくと共にお願いします!!」

「めのちゃん……」

 エンマ様の呟きと提案に、わたしは息つく間もなく懇願した。折角こはくに会えたんだ……また一緒にいられると思った矢先に、離れ離れになんてされたら元も子もない!

「こはく、おぬしはそれで良いか?」

「はい、エンマ様。めのうといられるのならどこへでも」

「こはく……」

 淀みのないこはくの応えに、わたしはゆっくりと隣の彼を見下ろす。同時にエンマ様からわたしに首を反らせたこはくの眼差しは、とても愛情深い温かさを放っていた。

「良かろう。ではこれより来世へ向かいなさい。次の世で共にありたいと願うならば、その手決して放すでないぞ」

「「はい!!」」

 こはくとわたしの高らかな返答が、広大な室内に同時に反響(こだま)した。

 と突然地面がグラグラと揺れ、着いている筈の床が割れる。一瞬にして開いた穴に、すっぽりと急降下するわたしの身体。その手が差し伸べられたこはくの前脚を握り締め、そのままこはくごと、わたしは暗い暗い奈落へ堕ちていった──。


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