10年ぶりの同窓会で再会した彼は次期社長のようです
ハーフアップの三つ編みの崩れたほうを濡らしてストレートアイロンを当ててくれる。
「熱くない?俺、人にするの初めてだからさ、熱かったら言えよな」
「うん、大丈夫、ありがとう」
幸い片方ずつ細いゴムで縛ってあり、崩れたほうだけをストレートに出来た。
「ゴムが出てもいいかな?細いから目立ちはしないけど」
「あっ、かんざしなら持ってる」
「かんざし?」
敦美はバックから小さめのかんざしを出して差してみた。
「おっ、可愛い」
思わず照れてしまった。
時間になったらすぐに仕事に行けるように自分のかんざしを2つ入れていたのだ。
「着物じゃないからおかしいかな?」
「いや、いいと思う」
「ありがとう、土屋くん」
「いや」
会話が途切れてしまった。
聞きたいことはたくさんあると思うのに……
自分の頭の中でまとまらない。
同窓会が始まったら人気者の土屋くんの事だから周りにたくさんの女子達が集まるに違いない。
中学生の時は、谷口くん派?土屋くん派?なんて女子が話していたほどだ。
もちろん私は……どっちでもないかなと答えていた。
無理に言わされる事はなかったからそこで話は終わる。
他の人に自分が土屋くんがいいと知られるのは嫌だった。