10年ぶりの同窓会で再会した彼は次期社長のようです
「それがね……」
「えっ!骨折?」
「そうなの、転げちゃって大腿部を骨折しちゃって、お父さんはお母さんについてなきゃいけなくて……夏休みまでには完全には完治しないと思うの」
「でも、私も夕方までは仕事あるし」
「それはもちろん知ってるよ、夕食の時に挨拶をしてほしくて……」
まあ、確かに若女将のみづほ姉ちゃんは部屋ごとに挨拶には行っている。
その姿は仲居としてずっと見てきた。
「仲居頭じゃいけないの?」
「あっちゃんが来るまでは頼むつもりよ」
そっか……朝からなら労働時間も長くなる。
仲居頭の美枝(みえ)さんも若くはない。
「……わかった。とりあえずジムの方とも話してみる」
「お願いします」
もう一度三つ指をついて、みづほ姉ちゃんは部屋から出て行った。
時間をみると夜の10時を回っていた。
9時に仕事を終えてみづほ姉ちゃんと1時間も話していた。
確かに夏休みじゃないと子供は学校の都合もある。
でも旅館は夏休みゆえの繁忙期
私は仲居の着物を脱いで帰る支度をした。
さて、帰ろう……
フロントに座っているみづほ姉ちゃんの旦那様、番頭さんにお疲れ様でしたと挨拶をして自分の軽乗用車に乗って家に帰った。